八月の魔物に挨拶を

今晩は、今晩も、眠れないね。

 

こういう夜はエンターテイメントに甘えきってしまう。

音楽と芸術と文学の海に溺れていたい。

朝なんか来ないで。まだ心臓が痛いままなの。

 

 

さて問題です、私は八月を生き抜けるでしょうか。

思い返せば昨年も「地獄だ……」と呟きながら這っていました。

息を潜めるような季節に、いつからなってしまったの。あんなに夏が好きだったのに。

 

もはや誠実であることしか生き方が分からなくなってしまった人間は、ただひたすらに一日、一日を重ねていくしかありません。

逃げたいけど、逃げる場所もよく見えなくて、そんな元気も残っていなくて。

やっとの思いで己を奮い立たせて玄関に立ちます。ぐっと目を瞑って、その涙は夕方のお風呂場に捧げましょう。

 

大丈夫、なんて無責任なこと、自分以外にはもう言えない。

大丈夫だよ。死なないよ。ちゃんと生きているし、家族も友達もいるよ。大丈夫だよ。

 

 

週末は温泉に行こうかな。

カレーをご馳走してくれるっていう話もあるんだ。

大丈夫、私はよく生きています。本当によくやっています。大丈夫。

 

八月の魔物に挨拶をして、夏を始めましょうか。

「どうか、お手柔らかにお願いいたします」